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このページは村井忠夫先生から寄稿いただくエッセイを連載しています。
区分所有法がIT化を打ち出したものの、管理組合の組織運営にどれだけこの手法が取り入れられるのか、いまだに見当がつきません。法律がいうIT化の適用範囲が実際に想定される適用分野のごく一部分にすぎないことも、この問題の展望の難しさに輪をかけています。
しかし、そうしたことよりも、もっと本質的な問題があることをこの頃おりにふれて感じるようになりました。それは、メールなどで意見を述べる場合の「モノの言い方」をめぐる問題です。かねがねメールには特有の言い方があるらしいことに気がついて、いつも言いようのない違和感を感じていました。そこへ、「掲示板」BBSという形態の情報交換で、よく理解できないケースがあることを何度も見たり聞いたりする機会が重なりました。どこの、どういう立場の、誰なのかがまったくわからないままの発言がどういう言い方になるかを、まさにうんざりするような思いで見る破目になる機会に何度もぶつかりました。当然ながら、こういう手法に疑問が多くなるばかりでした。
つい先ごろ、ITの専門家であり作家でもある方の話を聞く機会がありました。その話によると、向き合って対面しながら話をするときはきわめて常識に満ちた話し方をする人や、手書きのはがきや手紙を書く時はきちんとした書き方をする人が、メールになると、まったく様相一変した書き方の文面になるそうです。大学の研究者などでも、そうした傾向があるといいます。簡単に言えば、メールで意見交換をするときはいきなり本論に入るばかりでなく、それも、むき出しのとげとげしい言い方になるために、言われた方も収まりがつかなくなり、さらにエスカレートした言い方が展開される傾向があるという指摘でした。同じ人がメールや掲示板ではジキルがハイドになるような人格変容を起こすらしい怖さがあるという話を肌寒い実感を持って聞きました。
かなり前に、あるマンションの管理組合の理事長が、自分のマンションの理事会をメールの交換で進めることになり、そのメールを毎回転送してくれるという機会がありました。区分所有法がIT化を打ち出すよりも、はるかに前の話です。戸数が30戸程度なのでそうしたことができるのと、理事長自身がパソコンメーカーの人だったことも、こうした方法が実現する理由になっていました。
始めのうちは、こちらも興味があって毎回かなり熱心に見ていたのですが、そのうち、だんだん見ることを避けたいような気分になってきました。率直に言うと、見てはならないものを見ているような気分というか、他人の家の中をのぞき見ているような気分になってきたからです。なぜそうなったかという理由は、簡単でした。固有名詞丸出しで、どぎつい露骨な言い方の意見が飛び交うようになったからです。しかし、幸か不幸か、いやな感じがしてあまり見ないようになってまもなく、このメールの転送は来なくなってしまいました。理事長が交代したからです。1年という役員任期の短さが、かえって救いになったような気がしたほどです。
現状から判断する限り、メールや掲示板でやり取りされているような意見交換の仕方は、
どうも管理組合にとってプラスになるよりはマイナスになるような気がして仕方がありません。人の数だけ意見が分かれることが普通のマンションで、お互いの真意を確かめるための手法としてITが本当に信頼できるものかどうか、まだまだ用心したほうがいいような気がして仕方がありません。(2004.8.1)




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